3年前の夏、このサイトで中日・東京新聞記者の三浦耕喜さんが書いた『わけあり記者~過労でウツ、両親のダブル介護、パーキンソン病に罹った私』(高文研)を紹介した。その第2弾ともいうべき最新刊『わけあり記者の両親ダブル介護』(春陽堂書店)が1月に出版された。初めての介護で戸惑っている人、長引く介護に疲れている人たちにぜひ手に取ってもらいたい本だ。
2016年2月から19年6月まで中日新聞生活面に掲載された「生活部記者の両親ダブル介護」をもとに加筆して書籍化。両親を介護する日常の1コマが見開き2ページの65のエピソードでつづられているので、拾い読みもできる。
認知症の傾向が出始めていた母が、足腰が弱った父を自宅で老老介護していたことに限界を感じ、東京でのキャリアをあきらめて故郷の近くへ介護転勤した三浦さん。年間10万人が介護離職する現状を「他人事ではない」と感じつつ、自身の病気もある中で、妻や弟と協力し、介護保険も活用し、両親を別々の施設で介護することに……。随所に回想を入れ、時間軸を行きつ戻りつ、平易な語り口で、包み隠さず語られるエピソードの一つひとつがじんわり温かく心に沁みる。
「親を施設に入れているのでしょう。それは介護ではない」と電話をかけてきた人、保健所から引き取った犬の散歩中に父が転倒し、世話しきれなくなった犬を保健所に戻してしまったことに憤る人……そんな読者の声も率直に伝えて、三浦さんは語りかけていく。「介護をすること=人生の不幸」にしてはならない、と。
三浦さんは連載中の18年8月に父を、連載終了後の19年10月に母を見送った。決して円満ではなかった夫婦仲、親子関係が、介護する日々に「ささやかな喜び」を意識して見つけようとする中で徐々に変わっていく描写は、介護を担う人たちの一筋の希望の光になるのではないだろうか。
本書の中で、大切なことだからと繰り返される「介護をする側の苦労や辛さは、介護をされる側が歩んできた人生について関心を持つことにより、ある程度、場合によっては相当程度、軽減される」。両親を見送った三浦さんがこの言葉に託したメッセージが生まれる過程を、ともに味わってみませんか。(季)